タイ・プーケットに続け!フーコック島「サンドボックス」計画

ベトナム観光旅行記:第1回「フーコック島」
フーケット島・サオビーチ

 ベトナム・ホーチミン市から飛行機で約1時間の距離にフーコック島はある。私は当地の取材コーディネートで、日本のビーチリゾート紹介番組のカメラマンをフーコック島サオビーチにご案内したところ「自分が訪れた80ヶ所以上のビーチリゾートの中でもTOP5に入る美しさだ」と称賛された。

 近年日本ではベトナム・ダナンのビーチが人気だが、フーコック島はまだあまり知られていない。ベトナムでは夕日の沈む海を眺めることができるビーチリゾートとして人気がある。ベトナムの海岸線はすべて東側にあり、西側は陸地だからだ。

 フーコック島はリゾート開発もすすみ、今年2021年春には24時間営業のショッピングモールとミニホテル、コンドテルで構成されたリゾートシティ「グランドワールド」もオープンした。ベトナムのコングロマリット、ビングループが運営している。ビングループの子会社ビンパール社はすでにリゾートホテル、アミューズメント施設、サファリ、カジノをフーコック島に設け、本格的なビーチリゾートとして成長著しい。

フーコック島・ヴィンパールサファリ
フーコック島・ヴィンパールサファリ

 ベトナムではコロナの変異株のおかげで、従来累計感染者数が3千名だったものが、4月末からたった3ヶ月半で20万人を超え、一部都市では医療が逼迫し、死亡者数も急増している。そんな中でもベトナムはワクチン接種を終了し、入国前にコロナ陰性である旅行客を受け入れる「サンドボックス」試行をベトナム・文化スポーツ観光省が計画している。

 「サンドボックス」とはもともとIT用語で「コンピューター上の安全な仮想環境として、外部からのアクセスが厳しく制限された領域」のことだ。タイのリゾート地・プーケットを他府県とは安全に隔離された環境に置いて観光再開計画の実施することをタイ政府が「サンドボックス」と名付けた。

 プーケット「サンドボックス」は2021年7月1日より開始されている。この制度は日本を含む69カ国を対象とし、その利用にあたり旅行者は事前にタイ政府の入国許可証(COE)、ワクチン接種証明書、航空券、SHA+証明書(従業員の70%がワクチン接種を終えているなどタイ政府が定めたコロナ対策基準を満たした宿泊施設に与えられる証明書)、海外旅行保険に加入しているなどの条件を満たして初めて渡航できるものだ。

フーコック島・ヴィンパールリゾート
フーコック島・ヴィンパールリゾート

 この制度にならいベトナムはフーコック島でワクチン接種者限定で観光客を受け入れる「サンドボックス」実施を検討している。現在報道されている内容をまとめると次のようだ。

 本年10月から6ヶ月にわたって実施し、以下の二つの時期に分ける。

<第1期:2021年10月〜12月>
ワクチンパスポートを保有する観光客をチャーター便でのみ受け入れ、月2000〜3000名を目標。規定に従った大規模リゾート、観光地に限って観光サービスを提供する

<第2期:2022年1月〜3月>
受入れ人数を5000〜1万人に増やし、サービス可能な場所を拡大する。この時点では商業便を再開する可能性もある。

 ワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)を保有する入国者に対して隔離期間の短縮または隔離そのものの免除をする。

 この「サンドボックス」実施にあたり、文化スポーツ観光省はフーコック島民に対して7〜9月中にも70%以上ワクチンの接種を行うよう提言している。

 なおこの提案に対して交通運輸省はすでに了承したと報じられている。ただ他の政府機関が同意するかどうかは続報がなく今の時点では不明だ。

 英国国営放送(BBC)ベトナム語版によれば、タイ・プーケットでの「サンドボックス」実施で、7月1日から21日までに9358名の観光客を受け入れ、この7〜9月のホテルの予約数は24.5万室弱、5.34億バーツ(17.57億円)にのぼると報じた。同ニュースはタイ政府が22日よりプーケット周辺の島にも外国人の入境を認めたことも伝えている。

フーコック島・ナイトマーケット
フーコック島・ナイトマーケット

 世界に先駆けてはじまったタイ・プーケットの「サンドボックス」施策。もしこれが成功すれば、ベトナムもフーコックでの実施に踏み切るであろう。

 ただ現状ではベトナム南部をはじめベトナム全土でのコロナ変異株の急速な感染拡大で毎日1万人近い感染者が増加し、死者もこのところ300名を超え、ワクチン接種が進まないなか、大都市市での強力なロックダウンが続いている。従来のワクチンは変異種に対して重症化を予防するには一定の効果があるものの、ワクチンを接種していても100%感染しないという保証はなく、ワクチンパスポートそのものが実現可能なのかという点も不透明だ。観光産業をいち早く再開したいという気持ちもわかるが、それによって医療が逼迫するのであれば実施も難しくなる。ベトナム政府も悩ましいところだろう。 

文=新妻東一

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