ベトナム国内のみならず東南アジア諸国、日本にも輸出、板金加工機械メーカー/サイゴン機械工業有限会社

 かつて日本家屋の屋根材といえば瓦が主だったが、最近は洋瓦やスレート、あるいは金属製の屋根材が用いられるようになった。その傾向はベトナムにおいても同様で、工場のみならず一般の住宅の屋根にも金属製の屋根材が用いられている。

 鉄に亜鉛メッキを施したトタン材、アルミ・亜鉛・シリコンの合金で作られたガリバリウム鋼材といった屋根材は板金のままでは強度が低いため、波形や曲げ加工を施して強度を上げることになる。

 板金に波形や曲げ加工を施すための加工機械を主に製造し、ベトナム国内と東南アジア各国、そして日本にまで輸出しているのが、今回「ベトナム企業インタビュー」のコーナーで読者の皆さんに紹介するサイゴン機械工業だ。

 同社はヴィンロン省ビンミン工業団地に注力工場がある。ヴィンロン省はメコンデルタの省の一つで、ホーチミン市から車で3時間の距離にある。同社が立地するビンミン工業団地はメコンデルタ最大の都市であるカントー市に隣接する便利の良い場所にある。

 同社の社長はグエン・フー・クォック。会社の代表者であると同時に創業者でもある。同氏にZOOMによるリモート取材でお話を伺った。

 1998年、ホーチミン市工科大学で機械工学を学び、卒業したクォックは、ある顧客から台湾製の機械と同等のものが作れるか?と相談を受けた。その台湾製の機械は当時の価格にして9万米ドルはする代物であった。クォックは顧客の希望する仕様を検討し、その機械を自分で作るとしたら2、3万米ドルで製造できると見積もった。しかし当時、自分の手元に資金はない。

 「こちらは元手0ドン。仕方がないのでお客様からデポジット、つまり前金をもらってね。必要な資材や部品を購入して機械を組み立てたんだ」と笑うクォック。

 2002年にはその実績をもとに会社を設立した。たった8名の小さな町工場だった。

 創立以来20年を経て、同社は工場をホーチミン市、ドンナイ省、ヴィンロン省、ダナン市の4カ所にもうけ、フンイエン省には事務所を設置し、工員・従業員数を500名まで増やし、発展させた。

 サイゴン機械工業の得意分野は板金加工機械の製造だ。客先は屋根材などを作っているベトナム大手の建材メーカー・ホアセングループやナムキム板金などに加えて、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、ラオス、ミャンマー、カンボジアといったアセアン各国にも積極的に輸出している。タイの取引先工場は5、60企業にも及ぶ。日本向けにも輸出実績を持っており、同社の技術力の高さを示している。

 同社の機械製造に使われるCNCや旋盤といった工作機械類は台湾、韓国、中国からも購入はしているものの、一番信頼をおいているのが森精機をはじめとする日本製なのだという。日本製の工作機械は丈夫で、保守が簡単な上、中古で購入しても加工精度には変化がないのだという。

 「中国製は新品を購入しても、3年も使ったら精度が悪くなる。日本の中古はそれよりも精度が高いんだ。いわば工作機械の『トヨタ』みたいなものだね」と日本製工作機械の優れた点をクォックは強調した。

 このコロナの二年間、同社は仕事が激減した。小型の機械なら機械だけ送り込み、設置方法のマニュアルをビデオにして客先に送り、第三者に据付をやってもらうことが可能だが、大型の機械やラインの据え付けとなると、やはり自社の人間が出張して据え付けることが必要になる。それがコロナによってできないとなると受注数量そのものが減ってしまったのだ。

 コロナ明けにはすでにタイ、カンボジア向けに出荷をした。ポストコロナで客先からの注文も増えつつあり、これからが従来のコロナによる売上減を食い止め、新たな発展を目指す時期だとクォックは考えている。コロナによる受注、売上の減少が禍いして従業員数も半分近くにまで減ってしまった。これから再び採用をすすめコロナ前の状態に戻したいと彼は語る。

 クォック氏は3回、日本を旅行したことがある。1回目は10日間かけて日本全国を旅行した。温泉にも入ったし、寺院や富士山にも観光したという。

 「温泉は残念なことに男女別で、混浴ではなかったけどね」と冗談をいうクォック。後の2回は取引先の案内で工場を見学したそうだ。

 日本人に対する印象を彼に伺うと、日本では何でもきちんとしており、事前に予定がなされ、旅行のスケジュールなども決められた通りに実行されるという点をあげた。特に列車の時刻は印象的だったようだ。

 「列車は1分たりとも遅れずに運行されている。常にオンタイムだ。面談の時間を9時と約束したら、日本人ならみな、その15分前には集合する。しかしベトナム人ときたら、9時15分になっても全員揃わないんだ。遅れた理由はいつも交通渋滞と決まっている」とクォックは苦笑する。

 クォックに今後の夢を尋ねるとこう返事が返ってきた。

 「東アジア、東南アジアを市場とし、投資も進めて、競合相手の中国企業と肩を並べる企業に発展させたい。工場の土地はすべて合わせて15ヘクタールはあり、条件として中国の工場に劣る点は何もない。コロナで失った売上をはやく取り戻して、さらに前進するんだ」と抱負を語ってくれた。

 クォック氏は1975年生まれの47歳。子供は1男2女の3人の子どもの父親だそうだ。彼が率いるサイゴン機械工業の産業機械はすでに日本へも輸出されるほどの実力がある。彼を先頭にベトナム製産業機械の発展には大きく期待が持てそうだ。

文=新妻東一

サイゴン機械工業有限会社

2002年創業。主に板金加工機械を中心に、圧延機、シャッタードアロール成型機、断熱材貼付機などを産業用機械製造がメイン。ベトナム国内のみならず東南アジア諸国から日本への輸出実績も有する。社長はグエン・フー・コック。

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